#TOKYOサーキュラーエコノミーモデル 地域で進めるハブラシリサイクルで、お口と地球を健康に

2023.04.03

今年度環境公社が行っている、サーキュラーエコノミーの実現に向けたモデル事業に採択されたライオン株式会社が出展した「第22回 環境なんでも見本市」(板橋区主催)にて、ハブラシリサイクルについて取材しました。

―サーキュラーエコノミーの実現に向けたモデル事業とは―

地域密着型サーキュラーエコノミーの実現に向けて、資源循環に係る事業実績や知見のある都内の企業や業界団体等と連携して、資源循環に係る試験的な事業や仕組みづくり、制度の構築等に資するモデル事業を実施しています。

 ※詳細はこちら→ https://www.circulareconomy.metro.tokyo.lg.jp/model-business

―モデル事業におけるライオン株式会社の取組―

ライオン株式会社は、自治体の施設や学校、店舗などにハブラシの回収拠点を設け、使い終わったハブラシを集めてプラスチック製品にリサイクルしています。 既存の再生プロセスを改善し、リサイクルの品質・コスト双方の改善を行うため、モデル事業を活用して、生活者が回収拠点で使用済みハブラシを直接投入できる前処理機を開発しました。回収にあたり、別途ライオンがハブラシリサイクル実証事業において連携協定を締結した板橋区の協力のもと、「第22回 環境なんでも見本市」イベント会場での前処理機を用いたハブラシ回収を行いました。

東京都板橋区では、区内の商店街に回収ボックスを設置し、商店主や買い物客など地域の人たちとともに循環の輪を作り上げようとしています。どのようなことを目指して取り組んでいるのか、同社の中川敦仁さんに伺いました。

中川 敦仁 氏

ライオン株式会社 

サステナビリティ推進部

―ハブラシリサイクルはいつから始めたのですか

当社は2016 年にテラサイクル合同会社とともに宅配便による回収、再資源化を始めました。2020年から本社があった墨田区と共同での回収を開始、22年8月からは板橋区とも共同回収をスタートさせました。使い終わったハブラシを商店街の回収ボックスに入れてもらい、3カ月ごとに回収したものを集めてリサイクル工場に運んで再資源化しています。

ハブラシリサイクルの回収ボックスで集まったハブラシは、定規などのプラスチック製品になります。

今回商店街に回収ボックスを置かせていただいたのは、生活者である市民の皆さんに参加してもらいたかったからです。私たちは、ハブラシを月1回交換して下さいと呼びかけています。使い終えたハブラシを持って来てもらって、商店街のお店で新たに購入することを習慣化してもらえればと考えました。

―モデル事業でハブラシ回収・前処理機を開発した理由を教えてください。

今回、生活者が回収拠点で直接投入できる前処理機を開発しました。機器上部に設けたスロットに 1 本ずつハブラシを入れカバー を閉じると自動的にヘッド部をカットし、ハンドル部を粉砕します。
このプロセスを観察しながら「何故こうしたプロセスが必要か」を生活者に伝えることで、生活者の理解が深まることを期待しています。

―回収したハブラシはどのような製品になるのですか。

どのようなものに再資源化するかについては、現在板橋区と検討しています。墨田区では主に学校での回収でしたので、再生プラスチック定規として児童生徒の皆さんに返していきました。


私たちは現在、グループ会社で生産している猫用トイレの素材に使用済みハブラシの再生プラスチックを活用しています。この猫用トイレを、保護猫団体などを通じて猫を引き取る里親さんたちに寄付する「LOVE CAT, LOVE EARTH, さくらプロジェクト」のクラウドファンディングも行いました。今はまだ十分な量の使用済みハブラシを回収できていないので、予め決まった分量の製品にのみリサイクルプラスチックを活用できるというのが現状です。 

ハブラシリサイクルの取り組みを社員にももっと知ってもらおうと、ライオンでは新しい本社屋とハブラシを製造している工場の社員食堂で使用されるトレーに、リサイクル樹脂製のカフェトレーを導入します。 

―ハブラシリサイクルを含めて、地域で資源回収・再資源化の循環サイクルを作る上でどのようなことを大切にしていますか。

2050年カーボンニュートラル社会の中心を担う今の子どもたちが、資源回収・再資源化のプロセスを生活習慣として自然に身につけてもらうことは大切です。板橋区ではまだできていませんが、学校内で回収すると異物が混入しにくいため、子どもたちは安定的な回収の担い手でもありますね。今は新型コロナウイルス感染予防のため学校での歯磨きはできていないかもしれませんが、健康的な歯磨き習慣と安定的な回収習慣を身につけてもらうという両面からも、学校を巻き込むことは重要です。

板橋区内で行われた環境イベントで、ハブラシリサイクルを実演しました。

―ハブラシリサイクルを通じて、どのような社会の実現を目指しますか。今後の展望を教えて下さい

私たちは使用したプラスチックを、同じ品目にリサイクルする水平リサイクルを目指しています。しかし現状では技術的に難しく、また感染リスクの不安などからリサイクル材の製品をお客様が理解して使ってくれるかどうかも、まだ分かりません。そのような中で、今私たちにできることは、プラスチック使用量を削減しながら、事業で出したプラスチックを、自分たちの製品に使える品質でリサイクルし、事業の中で循環させていくことだと考えています。

私たちは必ずしも、回収量を追いかけているわけではありません。生活者の皆さんに捨てない習慣を身につけてほしいですし、毎日使うものが循環するということを知ってもらうのが、この活動の重要な第1のポイントです。リサイクルを知り、納得する生活者が増えることで、ハブラシリサイクルだけでなく、他のリサイクル活動も拡大して行くことを期待しています。

第2のポイントがリサイクルの品質を高めることです。これは技術開発ですので、さまざまな企業や大学などと連携し進めて行きます。

私たちのような日用品メーカーはこれまでのようにリサイクルを推進するだけでなく、今後はリサイクル技術開発をともに行う立場としても努力する必要があります。さらに、回収拠点の関係者の皆さんともっと対話して地域での循環の担い手であるということを感じてもらえるように、私たちの思いをさらに伝えていきたいです。


ライオン株式会社は、ハブラシを製造・販売するトップメーカーとして、プラスチックの再利用を推進すべく、2015年より使用済みハブラシの回収・リサイクルに取り組んでいます。生活に欠かせないプラスチック、それを廃棄するのではなく再利用することで、環境への負荷軽減、循環型社会に貢献するとともに、社会との共創、技術革新を推進し、ハブラシのリサイクル、そして再生品として有効活用されることを目指し取り組んでいきます。

(URL:https://www.lion.co.jp/ja/stories/